血管年齢について

血管年齢って知っていますか?血管年齢はこの十年くらい前からいろいろな方法で測れるようになりました。

一口に血管年齢と言ってもいろいろな測り方がありどれも同じではありません。血管の柔らかさを測るもの、血液の流れる量を測るもの、圧力の変化を量るもの、血管の太さの変化を量るもの等それこそ様々です。ただどの測り方も血管の衰え具合表していることは共通しています。

今ではたくさんの病院や検診施設でこの血管年齢を測ることが出来るようになり便利です。一度測ってみることをお勧めします。なぜならこの血管年齢、なかなか予想を裏切る結果が出ます。全く体に不自由を感じていない人の中から血管に問題がある人をとても敏感に探し出します。ですから予想外に悪い結果に驚いた利用者さんから「これは本当ですか?」としばしば聞かれます。

何故悪い結果が出たのか丁寧に調べていくとほとんどの方に高血圧、高脂血症、糖尿病予備軍、腎機能障害、先天異常などが隠れていることが見つかります。

中でも圧倒的に多いのが隠れ高血圧です。もともと血圧が高くても測っていないので気が付いていない人、日中は低いけれど朝起きてすぐ測るとすごく高い人、夜寝ている間になぜか高くなっている人、このように隠れ高血圧は様々ですが心臓は一日十万回動いています。少し高めの血圧だと油断していると心臓は一日十万回も働くので積み重なる負担やダメージが知らないうちに血管を固くしていきます。

歳を重ねても健やかでいる秘訣は何と言ってもささやかな習慣の積み重ねです。早めの気づきで豊かな老後を目指してくださいね。

夏は熱中症の季節です

家族でお見送り

夏は熱中症の季節です。日頃の水分補給を怠らないことは当然ですがきちんと食事をとることも予防のポイントです。多くのお年寄りは歳を重ねると食が細くなります。寝たきりのお年寄りも食の夏枯れに苛まれます。寒さも体にこたえるけれど暑さも体にこたえます。この夏、すでに何人かのお年寄りを見送りました。

「美味いもんくりゃー」

人の顔を見ると決まってそう言うおばあちゃんがこのほど旅立ちました。ほんのこの前まで口に物を運ぶと目を閉じたまま黙々と食べていたおばあちゃん、とある朝から何も受け付けなくなりました。たまたま家族が自分の事で診療所を訪れてくださり「おばあちゃん、朝から変なのよ」と教えてくれました。それはさっそく診に行きましょうとご自宅を訪ねると確かに元気がありません。診察をさせていただき、そろそろかもしれないことを告げて間もなくおばあちゃんは息をしなくなりました。とても安らかに息子夫婦に上手に最期を看取ってもらいました。

カルテを見返すと5年前からお嫁さんの肩を借りて来院するようになっていました。この一年間は自宅で寝たきりになっていました。息子夫婦は地域の施設を利用しながら上手にやりくりしておばあちゃんを看てきました。いろんな苦労もありました。お嫁さんはしみじみこう言いました。「おばあちゃん、私から嫌われる前に上手に逝ったわね。」訪れるご近所さんが口々に言います。「ばあちゃん、幸せだったね。ほんとに幸せだったね。」出来るなら、僕の最後もこんなほほえみの中で迎えられないものかと心から羨ましく思いました。

健康と病気の境目

昔は血圧が高くても元気でいればあまり気にかけませんでした。世の中の空気も血圧が高いくらいは大きな問題ではないと考えていました。私達はいつ頃から血圧が高い事を病気として考えるようになったのでしょうか。かつて戦時のアメリカ大統領ルーズベルトは大統領就任時の血圧が250mmHgであったことが記録に残っています。そして彼はその後戦争の終結を観る事無く脳出血で急死しています。

今年、日本高血圧学会はガイドライン2014年度版を発表しました。140/90以上は高血圧として生活習慣の改善、減塩、あるいはお薬による治療を勧めています。これに対し人間ドック学会は健康と思われる人の上の血圧は87から147であったと報告しています。

悩ましいですね。147までは健康だと思いたいのが人情ですよね。ところがこの基準には但し書きがあり「この範囲にいることが将来の健康を保証するものではありません。」とあります。これに対し高血圧学会の勧める「140/90未満」は脳卒中や心筋梗塞など人生を一瞬にして変えてしまう重大な病気を予防するための基準です。血圧が160以上あっても多くの人は平気です。140なんてさらさら平気です。それでも先人の長い観察研究により140より高い人は倒れやすいことが判っています。(本当は120以上あると事件が増えます。)

我が国の保険制度は明らかな病気に対してしか保険を使うことを許していません。ところが血圧に関しては、今困っていなくても大きな病気にならないように予防的に血圧を治療することを認めてくれています。これはとても有難い事だと私は心から思うのですが皆さんは如何でしょうか。

ジェネリック医薬品をご存知でしょうか

薬が出来るまでには気が遠くなるような長い道のりがあります。お薬に使えるかもしれない候補を苦労して見つけても、実際のお薬にたどり着くのは一万分の一程度と言われています。このような難関を耐え抜いた数少ない候補はさらに綿密な動物実験を経て初めて人間に使うことが検討されます。

これだけの手間と時間とお金をかけてお薬は世に出てきます。この為新しいお薬には訳20年の特許期間があり、よその会社が同じものを作ることを制限しています。この特許期間が終了したお薬をジェネリック医薬品と言います。製品化から20年以上の実績と経験があるお薬ですから他の会社が作る際には開発時よりもコストがかかりません。開発費用が掛からない分安くお薬を提供できるというわけです。

ではこのジェネリック医薬品、オリジナルと全く同じといってよいかどうかが気になるところです。私の診療所でも積極的にジェネリック医薬品を採用しています。使ってみて全く不具合のないものも多くあります。時には患者さんから不具合の申し出をいただくこともあります。では可能な限り全てのお薬をジェネリック医薬品にしているかというと実はそうでもありません。このお薬だけはジェネリック医薬品にしたくないと思うデリケートな部分はあります。

どのような時にジェネリック医薬品を避けているかはその患者さんの体の状態やあるいはお医者さんの病気に対する考え方で少しずつ違うと思います。大事なことはお薬を使う人がもっともっとお薬の事をよく知って使いこなすことだと思います。長くお世話になるお薬です。主治医や薬剤師さんによく訪ねてみてくださいね。

薬の名前を覚えていますか

歳をとるとなにがしかお薬の世話になりがちです。

自然界では生殖能力を失った生物は命が絶えるのが自然の流れです。なぜか人間は子供を作れなくなっても命を永らえます。生物の大きな使命の一つは命を繋ぐことです。その大きな役割を終える頃にはなにがしか体の不具合が出るのが普通です。

今では人が困難に遭遇すると様々な道具が助けてくれます。自動車、補聴器、老眼鏡、入歯、かつら、バイアグラ、その目的に応じて失われた体の機能に応じて様々な道具が生活や楽しみを助けてくれます。その中でもこの50年で飛躍的な進化を遂げた物の一つがお薬だと思います。

ACEIというお薬があります。血圧を下げるお薬ですがこのお薬を初めて使われた日本人は石原裕次郎さんです。その時の主治医は向井千秋さん、今は宇宙飛行士です。彼はこのお薬の助けもあって解離性大動脈瘤破裂の危機から命を救われました。今では動脈瘤破裂のような危機的な状態を避けるために日常的に使われているこのお薬も一昔前は命を繋ぐ大変な特効薬でした。

あまりにも世の中が便利になるとお薬の有難味も薄れるのか患者さんにお薬の名前を聞いてもほとんどの人が薬の名前を知りません。「先生に任せているから」とよく言われます。信じていただいて有難うございます。でもお願いです、お薬の名前を覚えてください。お世話になっている人の名前を覚えるように少しだけ、お薬に対して「有難う」の気持ちで名前を憶えてあげてください。そうすると、お薬達も頑張ってもっとあなたを健康にしてくれると思います。

お年寄りが輝く時

お年寄りは孫の話になると顔が輝きます。息子や娘の話でも喜びますが、孫の話になるとひときわ輝きます。人がこの世で成す大きな仕事の一つは子を残すことでしょう。子供が育つ事はとても嬉しいことです。ただ子育ては生活に追われ子供に命を繋いでいく喜びなど味わう暇もありません。

これが孫となると話が違います。孫の顔を見る頃には子育ても終わり心の余裕も少し出来ます。自分の命が子供や孫に繋がれた喜びも少しゆとりの気持ちを持って味わうことが出来るのでしょう、どんなお年寄りも孫を見るときの顔はとても輝きます。

他にお年寄りの顔が輝く時を探してみると意外なことに気が付きます。美味しいものを食べた時、踊りの発表がうまくいった時、おみくじで大吉をひいた時、それぞれに皆さん顔が輝きます。ところがご馳走を客が喜んでくれた時、自分の踊りでお客さんが笑ってくれた時、人に良い事が起こった時、人は自分の時よりもずっと顔を輝かせて喜びます。不思議ですね。人は自分の幸せよりも人の幸せを見る時により大きな幸せを感じるのですね。

近所の田畑を手伝うお年寄り、病院の花壇作りのボランティアのお年寄り、村の世話役のお年寄り、毎週駅のトイレ掃除を趣味にしているお年寄り、近所の集まりにお茶っこのおやつを作るお年寄り、みんなみんな輝いています。気持ちが自分へ自分へと向かうと心が縮んで笑顔が消えていきます。小さなことでも人が喜ぶと笑顔が浮かんできます。私もこれから人に喜ばれる習慣を身につけねばと思います。そうすると歳をとることが楽しくなるかもしれないと思うからです。

寒くなると血圧が上がりますね

寒くなると血圧が上がりますね。血圧を測る習慣のお持ちの方は多くの方がこのことに気が付きます。測る習慣が無い方はたまに測ってみてくださいね。驚くほど高いかもしれませんよ。

寒くなると何故血圧が上がるのでしょうか。当然、寒さが一役買っています。寒くなると血管が細く収縮します。すると血液が巡りにくくなって血の巡りが悪くなります。体は血を巡らせるために血圧を上げようとします。

血の巡りをよくするために血圧が上がるのだからそれは自然の働きで仕方がない事かというと残念ながらそうではありません。若い人や年老いても血管の状態が良い人は寒くなっても血の巡りが保たれて血圧を上げる必要がありません。ですから血の巡りが良い人は血圧も上がらないのです。

もう一つ寒くなって血圧が上がる理由があります。それは食べ物です。寒い季節に食べるものは塩蔵品が多くなりがちです。塩蔵品とは塩気で日持ちをよくした食べ物です。寒い季節は作物も海産物も新しいものが手に入りにくい生活を日本人は強いられてきた歴史があります。お漬物だけでなく食べる物の殆どが塩で加工されたものになります。そうすると自然に塩を採る量が増えます。オシッコに捨てられる塩の量を夏と冬で比較した実験がありますが冬のほうがオシッコに捨てられる塩分の量は多いのです。夏場は汗をかいたりして塩気をたくさん採っているかと思いきや冬場は汗もかかないのに塩気をたくさん採っているのです。

塩気は美味しいですね。だってお土産や名物の多くは塩蔵品です。生活のメリハリに上手に食べて塩気を増やさない工夫をしましょうね。

まわりに手を差し出してみませんか

テレビで新宿郵便局を訪れる様々な人をドキュメントしていました。その中に両手一杯の買い物袋に700通以上ものカードを入れたおじさんがいました。聞けば全国の孤児の施設に送るのだそうです。全国にある孤児の施設は約七百三十その全てにカードを送るのだと言います。何故そんな事をするのですか?という問いにおじさんは答えます。

「僕は根っからのみなし子だから、ひとから手紙が来る事が無かったのです。だから施設に手紙が来るのがとても嬉しかった。自分に来た手紙でもないのに何だかとても嬉しかったのです。それで大きくなったら僕も施設に手紙を出そうと思ったのです。」

「はっ!!」とさせられました。

人知れず心に深い悲しみや寂しさを抱く人が居ます。その悲しみや寂しさを人知れず埋めてあげようと努力する人が居ます。

世の中が幸せに向かう時はこういう心の働きが世の中を満たす時だと思います。私たち医者は人の体を健やかに保つお手伝いをしています。どうせならば心も健やかに保つお手伝いが出来たらと思います。世の中にお年寄りが占める割合は益々増えていき、歳を取ることへの不安の裏返しに健康への関心は高まります。体の制限が増えれば増えるほど心の広がりは奪われていきます。人との繋がりが途切れるほどに心の広がりも失われていきます。心が狭く狭く縮んだ先に認知症や老いがあるように思います。

周りを見回してみませんか。人知れず寂しく感じている人が居ませんか?言葉にできない辛さをじっと忍んでいる人が居ませんか?その痛みや寂しさに目を向けて、恐る恐る手を差し伸べた手の先に、相手の方だけで無く、あなたにも幸せが訪れると思います。